SST(ソーシャルスキルトレーニング)について

SST(Social Skills Training)とは「生活技能訓練」または「社会生活技能訓練」と訳され、認知行動療法に基づいたリハビリテーション技法です。精神に障害を持ったひとが社会で生活していくために、対人関係を良好に維持する技能を身につけ、自信を回復し(QOLを高める)、ストレス対処や問題解決ができるスキルを習得(再発防止)する目的ですが、これらの技法は障害に関わらず全ての人に適応できるものです。

当院SSTの歴史

1991年 生活技能訓練(基本訓練モデル)をデイケアで開始
1997年 服薬教室(服薬自己管理モジュール)を病棟で開始
1998年 生活技能訓練を病棟で開始
2003年 リエントリー(後に「退院準備グループ」と名称変更)開始
2009年より休止
2004年 SST委員会を発足(医師・看護師・PSW・OT・薬剤師)
2006年 退院促進グループ(現在:チャレンジグループ)を開始
2009年より作業療法部門へ移管しSST委員会としては支援体制
2012年 服薬教室のワークブックを吉祥寺版として製本化

院内研修会

初級研修 精神科経験1年以上の医療スタッフを対象に1年に1回施行
モジュール研修 初級研修を修了したスタッフを対象に1年に1回施行

吉祥寺病院のSST

当院の患者統計疾患別によると80%以上を統合失調症が占めており、統合失調症のリハビリテーションとして再発防止や生活の質を高め、社会復帰を目指す目的でSSTを委員会中心にプログラムを立て計画的に実施しています。プログラムセッションは以下の通りです

基本訓練モデル(ステップバイステップ方式):1クール12回、3クール/年実施
共通課題でグループ目標を立てますが、グループ目標に沿って個別の課題にあわせて練習していきます。自分の気持ちをうまく伝えることができるようにステップに沿ってスキル練習していきます。地域で生活する上で対人関係技能を高めることは生活の質を高め、ストレス対処や再発防止にも役だつことでしょう。
服薬教室:1クール7回~5回、5クール/年実施
退院へのステップとして導入され、服薬遵守、再発防止、薬への正しい知識を得ることを目的に『服薬自己管理モジュール』を7回~5回で修了できるようにしています。医師、看護師、作業療法士、薬剤師による多職種構成で心理教育的SSTとして長年にわたり実施されてきています。服薬教室修了者は今までの誤った考えや誤解から解放され、主治医や医療スタッフに相談できるスキルを身につけることができるようになります。服薬コンプライアンスからアドヒアランスへと意識が変わり、終了時には自分の疾病に向き合う姿がみられ、感動の場面をよく体験します。

チャレンジグループ:1クール12回(3ヶ月)、1~2クール/年(作業療法へ支援)
入院が長期化している方が退院へのイメージをつけるために、多くの見学や演習を交えて実施しているグループで、実際に作業所を見学し、利用者の方と交流したり作業体験をしたりします。食事については買物に行き、簡単に料理ができる食事作りを体験します。また病気とうまくつき合う方法や服薬の必要性、管理方法を学び、援助者に相談するスキルを学びます。

吉祥寺病院のリハビリテーションとSST

入院治療を開始しますと医師・看護師・PSW・作業療法士・薬剤師・管理栄養士などのチームで関わり、カンファレンスにより患者様により良い治療環境を提供します。カンファレンスで話し合われた結果、作業療法や服薬指導、SST、デイケア、作業所など退院へのプログラムとして、その個別性にあわせて導入されます。

外来通院の患者様や、近隣のグループホームで暮らし作業所へ通所されている患者様は、かなりの人数が何らかのSSTに導入された方たちで、スタッフとの治療関係がとても良く、自分の病気と向き合い頑張っておられます。

SSTを学ぶことのメリット

精神科リハビリテーションを行う上でSSTの技法は大変役に立ちます。

  1. 日常の看護場面で、患者様の対応する時のコミュニケーションが円滑にできるようになります。症状を聞いたり、つらさを共感したり、困っていることやもっとこうなりたいという希望を聞きだすことも上手くできるようになります。
  2. 統合失調症という病気の特性を理解し、援助技法を学べます。
  3. 患者さまの退院や社会復帰への援助に活用できます。
  4. 私たち自身の環境でのコミュニケーションが上手くできるようになります。職場や家庭での対人関係を円滑にできる力がつきます。
  5. 自分のストレス対処ができるようになります。
  6. 問題解決技法を学ぶことができ、ストレスの回避につながります。
  7. ポジティブに考え、生活できるようになります。